【装飾品で5題】



名もない主人公達の、5つの装飾品に纏わる恋模様。






01.ピアス


私たちはもうすぐ他人になる。
ほんの少し前…ううん。
正確にはこれから数十分後まで、私たちは兄妹だ。
でも、数十分後に私たちは他人になる…。
両親は、お互い子連れ同士で再婚で、私たちは今は未だ兄妹だけど、血のつながりはない。

その両親が、今日離婚をするのだ。
「そろそろ出かけるわよ。降りてらっしゃい」
母親の声がして、私は自分の部屋を出る…。
階段を下りようとしたら、兄が私の手首を掴んで、何か小さなものを、私の手のひらに落とした。
「何?」
そう言って、私は兄の顔を見る。
「持ってて」

それだけ言うと、兄は先に両親が待つ方へ、すたすたと下りていってしまった…。
残された私は、手のひらをそっとあけてみる。

…そこには、兄がいつもしていた、ピアスの片割れが光っていた…。











02.ネックレス


去年、初めて付き合った年。
私の誕生日プレゼントは、小さめだけど、品の良いプラチナの「ピアス」だった…。

「誕生日おめでとう」
貴方はふわりと微笑んで、小さな箱を私に手渡した。
「ありがとう」
そう言って受け取って、早速プレゼントを開けてみる…。

それは、可愛いプラチナの「ネックレス」だった。
「付けてみても良い?」
「良いよ」
貴方はそう良いながら、私からネックレスを取り首に手を回す。
私の華奢な首に、そのネックレスが付けられた。
「似合う…かな?」
「うん。そりゃ、似合いそうなの選びましたから!」
照れくれそうに笑いながら、貴方はそう言った…。

知らない…。

未だ、知らない…。

来年のプレゼントは、プラチナの「ブレスレット」。
そして、その次の年のプレゼントは、小さいけれど、キラキラ輝くダイヤが付いた
私の薬指にぴったりの、プラチナの「リング」だと言う事を

私は、未だ知らない…。











03.リング


「もう、終わりにしよう」
突然はなたれた言葉。
一瞬何の事を言われたのか分からなくて、キョトンとしている私に再度彼は言う…。
「俺たちもう分かれよう」
「はぁ?何それ!」
彼は私の反応が、どうもお気にに召されなかったらしい。
「だから、同じ事を何度も言わせるなよ!」
さっきとは打って変わって怒鳴り出す。

…怒鳴りたいのはこっちだ!
泣きたいのもこっちだ!
急に頭がまわってきて、自分の今の状況が分かってくる。
彼に買ってもらったおそろいのリングに手をかけ、外して投げようとしたのを、ギリギリ残っていた冷静さで何とかやめた。
その代わり、思いっきりビンタして部屋を出て行く。

今、感情任せでリングを捨ててしまったら、「未だ愛してる…」って感じで悔しく思える。
いつか知らない内に外せるまで、意地でも付けていてやろう。

帰り道、人目も気にせず泣きながら、私は、左薬指のリングに誓った。











04.バングル


「箱なんていらねっ」
そう言って、コンビニに置いてあるゴミ箱に、無造作に投げ捨てた。
深夜の出来事だ。
「どうせ、つけたら外す気ないんだから、そうだよねーw」
私も賛同する。
昼間のデート中、「何かおそろいの物欲しくない?」って事になって
でも、リングとかネックレスとかブレスレットとかの柄じゃない。
何か「綺麗」って感じのアクセサリーは、お互い「らしく」無かったんだよね;
「うーん:」って思いつつ、店内を二人でうろうろして
「これ。良いんじゃない!?」って、二人で同時に指さしたバングルを買ったのだ。

「付けてやるよ。腕かしてみ?」
言われるままに腕を出して、右腕に付けて貰う。
「んじゃ。私も付けるわ」
今度は、私が付けてみる…付けた腕は、私とは反対の左腕にしてみた。
「ま、こんなもんか。」
そう言って、私の右手を手に取り歩き始める。

勢いよく手を振りつつ歩いてたら、ふとバングルを付けた腕が目にとまった。
「あー何か、手錠してるみたいw」
「あー何か、手錠してるみたいじゃね?w」

………。

「ちょっw何、同時に言ってるのw」
「そっちこそwww」
同じタイミングで、同じように思ってくれたのが嬉しくて、夜中なのに二人で爆笑してしまった。

「あー。うちらって、合ってるよねーw」
「あー。オレらって、合ってるよなーw」

「…またかよw」
こうなったらもうダメで、結局二人とも笑いが止められないまま、家に着いた。

翌日、二人して「笑いすぎの筋肉痛(お腹)」になったのだった。











05.チョーカー







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